ブラザー工業はミシン修理業に端を発し、国産ミシン製造と海外輸出を目指して戦前に創業された歴史ある企業だ。後に海外展開とともに事業の多角化を進め、プリンタやミシンなどオフィスや一般家庭から、工作機械など産業用向け製品までをカバーし、今日に続く日本の製造業の中核と呼べる事業展開を行っている。同社は2014年からGitHub Enterpriseをソフトウェア部門に導入し、業務フローの改善と生産性の向上を実現している。GitHub導入はさらに若手を中心とした開発者らのやる気を鼓舞する原動力にもなっており、副次的効果も生み出すこととなった。
ブラザー工業では、主製品である組み込み製品をサポートするアプリケーション、ドライバ開発においてMicrosoft のTeam Foundation Serverを活用していた。Team Foundation Serverの稼働するサーバOSの保守期限が切れるのをきっかけに、よりモダンな開発環境に移行しようと考え、すでにオープンソース開発の世界で多大な実績のあるGitHubの導入検討を始めた。GitHubと並行して他社製品も検討したが、製品の使いやすさ、わかりやすさという点からGitHubを選定した。
Team Foundation Serverにおける課題は、ブランチの派生元が同じであっても派生元を考慮したマージ(3-way マージ)ができない場合がある、ネットワークに接続されているときでないと変更を加えることができないという仕様上の課題問題のほか、自由にリポジトリを作成することができないという運用上の課題があった。同社内では製品向けのソースコードのほか、自作ツールのソースコードも存在しており、状況に応じて柔軟にリポジトリを作成し利用したり、ローカルのリポジトリ上でコミットしたいという要望が恒常的に現場から上がっていた。GitHubでは両者を同じ場所に置いておけるため、運用上の課題をクリアできたという。また、アプリケーション開発はWindowsだけでなくMac向けのものもあるため、Macのネイティブ環境を直接サポートができない点でTeam Foundation Serverの運用には制限があったという問題もあったが、GitHubでこれも解決できた。
Team Foundation Server 時代は単なるバージョン管理システムの域を出なかった仕組みが、GitHub 導入を機に開発者同士がコラボレーションする場へと変化した。また、同時に生産性を向上させ、より開発の現場へと皆を誘導する役割を担った点で、現場に新鮮な感動を与えたようだ。
「今までは、チームのメンバーがコードに対するレビューや感想を書いてくれることはほとんどありませんでしたが、GitHub 導入後は誰に言われるともなくチーム内でPull Requestに対するコードのレビューが始まりました。最近では、他部署の社員からもフィードバックが来るなど、今まではほとんどなかった部署をまたいでのコラボレーションも実現するようになりました。」と、GitHub 導入をリードしたソフト技術開発部の伊集院氏は議論が活発になったという副次効果について語る。
また、同開発部の甲斐氏は、SNS的な仕組みと合わせ、ノウハウの蓄積と共有や埋もれたナレッジの発掘で大きな効果も得られると言う。「GitHubは経験が少ない社員の教育にも役立っています。上手なケース、そして下手なケースも含めて、人が書いたコードを見ることは技術力の向上に直結します。GitHubではソースコードをURLとして送れるので、経験が少ない社員に“このコードを見てごらん”と送ったりして教育しています。また、今までは参考になるコードをWeb 検索していたのですが、GitHub内を検索して必要な情報を自社のリポジトリから見つけ出せるようになりました。社内で使うコードなので、社内で検索したほうが、自分が探しているものに最も近しいコードが見つかり効率的です。」
GitHub 導入当初は運用ルールが整っていないなど、チームやメンバーによって習熟度に差があるという問題があり、必ずしもすべてにスムーズに受け入れられたわけではない。だがGitHubの利用に関する情報は世の中に溢れており、その気になれば誰でも必要な情報へとアクセスできる。チーム内で詳しいメンバーを中心に勉強会などを経て習熟度が向上し、チームごとに異なる特色をもって運用が行われている。
既存環境からGitHub Enterprise への移行では、Team Foundation Serverの履歴を残した形での作業が行われた。スクリプトを記述して1年ほどかけて手作業で移行したという。伊集院氏は移行時の経験を次のように振り返る。「移行に時間はかかりましたが、移行後はシステムが非常に安定していて落ちませんし、高速で作業上のストレスを感じさせないのがいいですね。」
現在、GitHub Enterprise を導入しているのは社内の一部の部署だが、部署をまたいだコミュニケーションにも同製品を活用している。最近ではデザイン部門のメンバーも利用方法を覚えるようになり、以前までは手間をかけてExcelでデザイン指示を書いていたが、GitHubを使うことで作業の効率化が進んだ。Excelファイルは共有フォルダを介してやりとりされるため、Mac からのアクセスが煩雑という問題もあったが、これをGitHub上で共有し、後はPull Requestを通じてレビューし、マージすることで負担が軽減している。
伊集院氏は、GitHub活用の可能性を次のように考えている。「現在、仕様書はWordやExcelで作成していますが、テキストベースにしGitHubで管理することで仕様書変更点がわかりやすくトラッキングができるようになると思います。外部業者とのコミュニケーションにはGitHub のPull Requestと相性がいいと感じています。共通の作業基盤としてGitHubの使いやすさを社内に広めていきたいですね。」
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