事例

ヤマト運輸株式会社 & GitHub

1919年の創業以来、日本初となる路線事業を開始し、1976年には個人間で簡単に荷物を送ることができる「宅急便」を発売するなど、日本全国を網羅する物流ネットワークを構築し、社会的インフラとして社会課題の解決に取り組んできた。現在は、宅配便サービス国内シェア第1位(シェア:46.6%、2021年度、国土交通省調べ※)、国内宅急便ネットワークカバー率100%を誇り、宅配便の年間取扱個数は約22.5億個(2021年3月期)に達した。2020年1月に経営構造改革プラン「YAMATO NEXT100」を策定し、データ・ドリブン経営を推進している。

※令和3年度 宅配便等取扱個数の調査及び集計方法(国土交通省)

開発環境の内製化の実現に向けAzureとGitHubを採用 開発基盤を統一し、アジャイル開発とDevOpsを促進

・AzureとGitHubを採用し開発基盤の内製化へシフト、DevOps導入を実現 ・内製化に向けてエンジニアを約100人採用。事業部門とのコミュニケーションを通じ、より良い協力関係を構築 ・アウトソーシングの見直しにとどまらず、自社開発の強みをさらに強化する内製化を促進 ・サイロ化されていたナレッジを社内にシェア、横展開に期待

開発スピードと柔軟性向上に向け開発基盤の整備と内製化にシフト

ヤマト運輸株式会社(以下、ヤマト運輸)を有するヤマトホールディングスは、創業から100年を迎えた翌年の2020年1月に、中長期の経営のグランドデザインとして経営構造改革プラン「YAMATO NEXT100」を策定した。このなかで、次の100年に向けた持続的な成長と企業価値の向上を目指すためのビジョンを打ち出した。具体的には「『宅急便』のデジタルトランスフォーメーション(DX)」、「ECエコシステムの確立」、「法人向け物流事業の強化」に向けた3つの事業構造改革と、「グループ経営体制の刷新」、「データ・ドリブン経営への転換」、「サステナビリティの取り組み」からなる3つの基盤構造改革を両輪で推進するというもの。競争優位性を確保しながら、物流と親和性のある新たなビジネスモデルの創出にもチャレンジしている。

こうした構造改革を実行する上で必要な要素は、情報システム開発やアプリケーション開発における「開発環境のモダン化」と「内製化」への取り組みだった。ヤマト運輸 執行役員 (DX推進担当)の中林 紀彦氏は、次のようにその理由を語る。「これまでのシステム開発は、グループのIT会社や社外のシステム会社にアウトソースするケースが多くありました。しかし最近では、システムの開発スピードと柔軟性に対応するため、社内に開発チームを擁することが重要になっています。様々な要件に迅速な対応を行いながら、ビジネスへの適応やスピード感のあるサービス開発、多様なニーズを汲み取りながら柔軟に開発スタイルを変えるためには、エンジニアに支持される開発基盤の整備と、それを活用した内製化が必要です」

ウォーターフォール型(上流工程から下流にそって開発を進める手法)で開発する大規模案件は、従来通りグループのIT会社や社外のシステム会社に協力を仰いでいく。しかし、新規サービスなどで様々なニーズを汲み取りながらアップデートしていく開発には、社内のスクラム開発チームで内製化し、アジャイル型で開発していくことが必要だと中林氏は説明する。また、アジャイル開発を進める上ではDevOps(開発チームと運用チームが連携・協力する開発手法)体制も重要だという。同社は、EC荷物の受け取り方法をお客さまのご都合に合わせてリアルタイムで選べるEC向け配送商品「EAZY」の開発や、オートロック付きマンションで複数のデジタルキーを一括管理することでセールスドライバーがマンションのオートロックをデジタルキーで解錠できる「マルチデジタルキープラットフォーム」の開発とサービス立ち上げもDevOpsで行った。

“内製化に向け、2年で約100人のエンジニアを採用 事業部門との連携を強化”

当初、内製化を進めるためのデジタル人材が不足していたため、外部からチームリーダーを採用し、チームビルディングを進めたという。そのチームリーダーとして採用されたのが、ヤマト運輸 デジタル戦略推進部 ミドルエキスパート 田中 俊一氏だ。田中氏は、開発チームのスクラムマスターとしてプロダクトオーナーや開発メンバーにアジャイル開発をサポートしていた。初期のころは事業部門との開発文化の違いから苦労したこともあったという。

「私が入社した際は、事業部門はウォーターフォール型での開発経験が主流で、文化の違いを感じました。そこで、まずは社内で規模の小さい案件から、2週間のスプリントで事業部門と意識を合わせながら、開発がイメージ通りに進んでいるかを確認していきました。このような小さな積み重ねで、事業部門も一緒にプラットフォームを作り上げるという意識に変化したことがうれしかったです。」

「GitHubのおかげで開発は順調に進みました。それでも、アジャイル型の文化を浸透させるには半年以上はかかったと思います。」と田中氏は振り返る。

クラウドのデータ基盤としてAzureを活用しGitHub EnterpriseでDevOps開発体制を整備

開発基盤のモダン化や内製化へのシフト、DevOpsによる開発体制の導入に向けて採用されたのが、クラウドコンピューティングサービス「Microsoft Azure」(以下、Azure)と、企業向けGitHubのクラウド版「GitHub Enterprise Cloud」(以下、GitHub)の活用だった。

ヤマト運輸は、クラウドのデータ基盤・アプリケーション実行基盤としてAzureを活用し、社内に浸透させてきた。同社がAzureを採用したポイントは、クラウド市場シェアを背景にしたサービスの安定性や、国内複数リージョンを活用した低遅延DRの実現、高いパフォーマンス、PaaSやDevOps環境の充実などが、他のメガクラウドに比べて優位性があったからだという。

一方、GitHubの採用は、内製化を進める上での開発環境の標準化・統一化が目的だったが、GitHubの選択は自然な流れだったと中林氏はいう。「DevOps開発体制を構築・浸透させる上ではデータグラビティ(データの蓄積によりビジネスに与える影響力が高まること)がより重要になるため、ソースコードの維持・管理で最も信頼でき、かつ付加価値の高いGitHubを選択することは自然な流れでした」(中林氏)

一歩進んだ内製化:アウトソーシングの削減だけでなくアーキテクチャデザインやコードのガバナンスも視野に

GitHubは2021年に正式に導入を決定。社内で開発基盤の標準化と移管を進めながら、現在は全てのソースコードをGitHubで集中管理している。田中氏は社内の多くのエンジニアがGitHubの標準化を望んでいたと話す。「GitHubが人気なのは、業界で最もメジャーで、慣れ親しんでいるという点があります。これは開発活動との親和性が高く、ソースコードが常に集約されていて、全てGitHub上で実現できる利便性があるからだと思います。また、GitHubは常に機能改善・拡充を行っているため、新しい機能を試してみようというエンジニアの好奇心を掻き立てられることも支持される理由のひとつだと考えます」(田中氏)

また、中林氏はGitHubを活用することで内製化の新たな方向性を探っているという。「これまでの内製化はアウトソーシングからの見直しが主体でした。今後は、アーキテクチャのデザインやGitHubを活用したソースコードのガバナンス・標準化が実行可能なメンバーによるコアな開発は内製化しつつ、短期的にリソースが足りない部分は外部に委託するなど柔軟な対応が必要になります。どこまで自社のコアコンピタンスを内部リソースとして持つかを見極めることにより、1歩進んだ内製化の道も見えてきます」(中林氏)。さらに、AzureとGitHubによって内製化を進めると、これまでサイロ化していたナレッジが社内共有され、横展開しやすくなるという効果が表れているという。将来的には、ソースコードに付加価値があることを経営陣にも説明できるようにしたいと中林氏は期待する。

今後は、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)でも「GitHub Actions」を活用していくとともに、「GitHub Advanced Security」を活用したDevSecOps(開発・運用の各工程に応じたセキュリティ対策をプロセスに組み込む開発モデル)の可能性も探っていく考えだという。 中林氏は今回の取り組みを振り返り、「エンジニアリングのベースとなる総合的な開発環境をAzureとGitHubで構築したことは間違いのない選択だったと確信しています。最新技術は日々更新されているため、日本マイクロソフトとギットハブ・ジャパンの両社には、最新の情報提供も含め、引き続ききめ細かなサポートを期待しています」と語る。

  • 業種

    陸運業

  • 企業規模

    10,000+

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